玉村:そうですね。

人生の終着点から今を見る。父の死と「墓碑銘」が教えてくれたこと

玉村:定年退職後、「糸の切れた凧」のようになってしまう人もいます。どう生きていくべきでしょうか?

尾崎:定年後に「糸の切れた凧」のようになってしまうのは、仕事が目的になっていると、定年がゴールになってしまうからではないでしょうか。定年は人生のチェックポイントのようなものです。人生100年時代、残された人生をどう彩っていくかを考えるべきです。

忙しい方ほど先のことを考える余裕がありませんが、どこかで立ち止まって、先を見て自分の目的・目標をしっかり定めることが重要だと思います。

玉村:18歳の時にお父様を亡くされた経験が、人生観や仕事観に影響を与えた部分はありますか?

尾崎:私の人生の第2ステージはその日から始まりました。父の葬儀に200人から300人が集まったのを見て、私は悲しいというよりも誇らしかったんです。人生最期の日にどうなるのか。父以上に自分の別れを惜しんでもらえるのか、感謝の言葉をいただけるのか、それが私の人生の価値そのものなのかなと18歳の時に教えて頂きました。

父よりも多くの人に集まってもらえるような生き方ができたら、亡くなった父も誇らしく思ってくれるのではないかと思いながら、今も仕事をしています。

玉村:その夢に向かって、今も着々と進んでいらっしゃるのですね。

尾崎:そうですね。特に現在の組織マネジメントのコンサルティングは、会社の代表だけでなく、その会社全体が変わることで従業員全員に影響を与えることができます。これは、独立していた時に個人向けに行っていた1対1のコーチングとは影響力の大きさが全く違います。1000人の会社が変われば、その家族や知人まで含めて社会全体が変わる。だからこそ、非常に大きなやりがいを感じています。

玉村:死を意識することについて伺います。スティーブ・ジョブズの「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やることは本当にやりたいことか」という有名な言葉があります。この言葉に向き合うと、「やりたくない仕事をしている今の自分は何なんだ」と悩んでしまうこともあるかと思います。死を意識した時、今を生きる意味をどう捉えればよいでしょうか?