玉村:AIが普及し、働かなくても生きていける世界が来るかもしれません。そうなった場合、人はどうするでしょうか?

尾崎:たとえ経済的に働く必要がなくなっても、人は何かしらの社会活動を続けると思います。ただ資産を運用し、家で動画を観て過ごすだけの受動的な生活では、きっと満たされないでしょう。やはり、社会との接点を持ち、人と繋がっていく活動を求めるはずです。

さらに、私個人としては「父親としての役割」も大きな動機になります。子供たちに「親父を超えるぞ」と目標にしてもらえるような存在でありたい。何かに熱中して打ち込む姿を、彼らに見せていきたいという思いは強いですね。子供が親を目標にしてくれること、それは親冥利に尽きる事だと考えています。

玉村:組織で働く意義についてですが、向いていないと感じる仕事でもやりがいや意味を見出すことはできるのでしょうか?

尾崎:「向き不向き」をどう捉えるかによりますが、自分の人生の目的達成に向かっていない仕事であれば、自己実現は難しいかもしれません。しかし、不得手なことでも、目的達成のためにどうしても必要なのであれば、その壁は突破するしかありません。

私たちはこれを「ブレークスルー」と呼びますが、困難を乗り越えることで「こんなこともできるんだ」と新しい自分に気づくことがあります。実際、私は元々SEだったのでコミュニケーションは苦手分野でしたが、自分にとって必要だと思って克服してきました。

玉村:職場の中で自分が何の役に立っているのかわからない、ただの歯車だと感じている方はどのように考えるべきでしょうか?

尾崎:仕事を通じて報酬をいただいている以上、その先には必ず喜んでいる方、助かっている方がいるはずです。全く役に立っていないということはないと伝えたいです。せめて、今やっていることが自分の目的や目標に繋がっているという実感を得られるといいでしょう。

私は大学時代に居酒屋でバイトしていましたが、目的は魚をさばけるようになることでした。ですから、たとえ最初の仕事が皿洗いであっても、「この経験が最終的な目的に繋がるんだ」と考えながら取り組むことができました。また、単調作業が好きではないので、勝手に楽しむように工夫していましたね。ゲーム感覚にしてしまうというか。