玉村:上司が部下をストレッチさせてあげることが大切なんですね。
尾崎:そうです。我々は「時感覚」と呼んでいますが、部下は上司が「3時間でやれ」と言ったら、3時間以内でやる方法を考えます。上司の立場であれば、「無茶ぶりかな」と思うことでも一旦振ってみると、部下は何とかして達成しようと頭を使います。それでも本当に頭を絞り出して「3時間では無理です」となるのであれば、その時に相談してもらえばいいと思います。
仕事は人生の「手段」。リスクを伴う「ありがとう」にこそ価値がある
玉村:「人はなぜ働くのか」というより根本的な問いについてお伺いします。多くの人は生活のために働いていますが、働くこと自体を「生きる目的」とする人もいます。仕事とは、人間にとってそこまで重要なものなのでしょうか?
尾崎:働くことの意味や意義は、時代や世代によって大きく変わります。私は昭和54年生まれですが、平成生まれの妻にリゲインのCM「24時間戦えますか」を見せたら、「これってブラック企業の歌だよね」と言われました。生きてきた環境が違えば、同じものを見ても全く違うように感じるんですね。
その上で、私自身は働くこと自体が目的ではなく、手段に過ぎないと思っています。自分の人生の終着点をどう描くか。それをイメージできれば、今の仕事がそこに向かうための有効な「手段」になっているかどうかで判断できるはずです。
そして仕事の醍醐味は、他者評価を報酬という形でわかりやすくスコア化できる点にあります。ボランティアでも感謝はされますが、仕事ではお客様もリスクを負っています。そのリスク以上の価値を提供し、結果にコミットして初めて、本当の意味で社会から「ありがとう」という感謝をいただくことができるのです。
玉村:仕事が目的ではなく、レスポンスや他者からのフィードバックが日々返ってくることが楽しい、ということでしょうか。
尾崎:そうだと思います。やはり人は人から感謝されたいのではないでしょうか。自己重要感や自己受容感といったものを満たしていきたいのだと思います。