この4.3回という数字が、健康効果が急激に高まる「境界線」のような役割を果たしているわけです。
また、1日に行うVILPAの回数をさらに増やすと、死亡リスクはもっと低くなりましたが、その効果は8回前後からゆるやかになり始めました。
一方で、VILPAの「合計時間」についても分析を行いましたが、こちらは少し違った結果が示されました。
時間で見ると、1日約1.1分のVILPAで、死亡リスクは約39%低下しました。
そして、合計時間をもっと増やすと、約2分前後から効果の伸びがゆるやかになりました。
つまり、「回数」の場合は8回前後、「合計時間」の場合は約2分前後が、「効果が最大限に近づき、それ以上はあまり大きく変わらなくなる」ポイントだったのです。
これは言い換えると、「短い激しい運動」はほんの少し取り入れるだけで大きな効果が得られる一方で、それを何倍にも増やしても、必ずしもそのぶん効果が同じように何倍にもなるわけではない、ということになります。
つまり、「とりあえず1日数回、合計数分程度やれば、十分に大きなメリットが得られる」ということを意味しています。
また、この研究は、同じく加速度計を使って行われた過去のイギリスの研究(UKバイオバンク)とも比較されています。
UKバイオバンクでは、1日約4.4分のVILPAで死亡リスクが約38%低下したという結果でしたが、今回のアメリカの調査では、もっと短い「1日約1.1分」でほぼ同じか、やや大きな(約39%)リスク低下が見られました。
この結果の違いについて研究者たちは、「参加者のもともとの運動習慣や健康状態の違い」による可能性を指摘しています。
イギリスの調査に参加した人々はもともと健康意識が高く、普段からある程度身体活動をしている人が多かったのに対し、今回のアメリカの調査では、「ほとんど運動をしない、非常に活動レベルが低い人」を対象としていたため、ほんの少しの運動でも非常に大きな健康効果が出やすかった可能性があります。