運動嫌いでも「これならできそうだ」と思えるハードルの低さが、大きなメリットと言えるでしょう。
実際、調査では参加者全体の約9割が1日に1回以上のVILPAを行っていました。
つまり、多くの人は意識していなくても日常生活で少しは体を激しく動かす瞬間があるのです。
それを「ゼロを1にする」ように意識的に増やしていくことで、健康効果を享受できる可能性があります。
もちろん、今回の結果は観察研究による関連性の指摘であり、因果関係(本当に運動のおかげで寿命が延びるかどうか)はまだ証明されていません。
また、本研究では死亡リスク全体として有意な差が示されましたが、心臓病やがんなど特定の原因による死亡については、統計的に明確な傾向が出ない項目もありました。
これは追跡期間中の該当する死亡者数が少なく、はっきりした結論を出すにはデータが不足していたためと考えられています。
そのため、「1日1分で絶対に病気が治る」といった極端な解釈は禁物で、今後の研究による裏付けが望まれます。
しかし全体として、「たとえごく短い時間でも激しい身体活動はしないよりした方が良い」というメッセージは多くの人に当てはまりそうです。
最後に、この研究から得られる教訓はシンプルです。
まずは「ゼロより少し」体を動かしてみよう、ということです。もし普段まったく運動していないなら、今日からほんの数十秒でもいいので息が切れるような動きを生活の中に取り入れてみてください。
例えば通学や通勤でいつもより早歩きしてみる、エレベーターではなく階段を小走りで上ってみる、といった工夫です。
小さな一歩でも、積み重ねれば大きなリターンが期待できる──それが今回の科学的発見が示唆する希望と言えるでしょう。
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元論文
Vigorous intermittent lifestyle physical activity (VILPA) and mortality risk among US adults: a wearables-based national cohort study
https://doi.org/10.1101/2025.08.05.25333017