ここでは、まず8項目からなる総合力の優劣と、その中でも近代国民国家の総力戦になってからはいちばん重要度が高いと思われる財政・金融力比較から見ていきましょう。
左側が総合力を構成する8項目それぞれの比較ですが、空軍力と地理的特徴以外はすべてイランが優勢でイランの6勝2敗という評価になっています。
空軍力のイスラエル優位についてはちょっとあとで詳述しますが、地理的特徴でのイスラエル優位はあきらかにおかしいと思います。細かい項目を読むと狭い国土なので交通輸送インフラなどの整備が進んでいることがイスラエルを高く評価する理由となっています。
ですが、全面戦争になった場合、決定的な要因になるのはリスク分散ができる広大な国土を持っているかどうかでしょう。
その点では、日本の四国地方にほぼ等しい2万2000平方キロの国土に900万人が住むイスラエルは、その75倍に当たる165万平方キロの国土に約8300万人が住んでいて、しかも国土の多くが険阻な山岳地帯になっているイランよりはるかに不利だと思います。
右側の財政・金融力に眼を転じると、目立つのは小国としては身分不相応なほど大きなイスラエルの対外債務です。これほど大きな対外債務をしょいこんでいる最大の理由は、やはりパレスチナ人に対する不断の侵略などに要する軍事予算が肥大化していることでしょう。
また、その大きな対外債務をさらに上回る外貨準備を持っているのは、世界的に嫌われものとなっているのでさまざまな物資を買うにも金払いは良くしなければすぐ見放されてしまう程度の自覚は持っているということでしょうか。
続いて、空軍力・陸軍力の比較です。なお、海軍力についての比較を省略するのは、現代戦争では一にも二にもスピードが大事で、その点最新鋭空母や大型原子力潜水艦までふくめても、海軍全体が積極的に敵軍を打ち負かす決定要因となることはなさそうだからです。
フーシ派イエメン軍はドローンと肩撃ち式ミサイル以外には高速ボートだけで、アメリカ空母艦隊を紅海から追い出しましたし、ロシア軍が唯一劣勢なのは、海軍らしい海軍を持たないウクライナ軍に黒海艦隊の旗艦を撃沈された海戦だけですから。