レーダーは目標物が、一定の仰角を越えた高さに来るまで探知できないので、レーダーが探知できた頃にはもう標的のすぐ近くまで迫っていることになります。

さらに、空気密度の差に微妙なでこぼこがあると、そこで水切り石が跳ねるように跳ねながら進むので探知はさらにむずかしいけれども、地表近くを飛んでいるので標的間近に迫っても方位や角度を調節しやすいという利点もあります。

ようするに様々な点で、発射地点、自重、推進力、発射角度、発射方位をつかめばその後の軌道を推定しやすく、迎撃にかなり時間をかけることも可能な弾道ミサイルに比べて、はるかに探知がむずかしく、標的と着弾地点との誤差も小さくできるミサイルなのです。

なぜアメリカの兵器産業はこれほど利点の多い極超音速ミサイルを開発できずにいるのかというと、ワイロ漬けの産業の常として、ありとあらゆる兵器や部品をすさまじく割高にしてしまったために、自縄自縛に陥っているという事実が浮かび上がってきます。

こんなに性能の良い新兵器を性能に見合った価格で売れば、ほとんど実用性がないほど高額になってしまうし、もしこれだけは破格の「安値」販売をしたら他の兵器がほとんど売れなくなってしまうという、純粋に企業利益の観点から開発が棚上げになっているのです。

イスラエルは、このままイランのミサイル攻撃を受けつづけると12~14日間で迎撃ミサイルの在庫が底をついてしまうと分かってアメリカに泣きつき、アメリカ側からイランに休戦を持ちかけたのが、開戦後12日目に当たる6月24日のことでした。

しかし、イスラエルはイランに突然攻撃を仕掛けて無事に済むほどの軍事力、経済力、人口力を持ち合わせていたのでしょうか。

対イランとなるとイスラエルは蟷螂の斧

『世界の軍事力(Global Fire Power)』という定期刊行物が、世界145カ国について様々な視点から軍事力ランキングをつくり、特定の2カ国が実際に戦争状態に入ったら、どういう結果が出そうかを推定する材料を提供しています。