この点については、ごく最近イスラエルで発行されているヘブライ語新聞『イェディオト・アーロノト』紙が、ペンタゴンの内部資料に以下のような記述があったとすっぱ抜いています。
12日間戦争でイスラエルが発射したサード型迎撃ミサイルは100発以上に及んだが、これはすぐさま実戦に投入できるサードミサイル全在庫の約4分の1に当たる。
その補充は遅々として進まず、2024年には11発しか製造できなかったし、今年も12発しか製造できない見通しだ。
このままイスラエル軍にサードミサイルを発射させておけば、米軍自体の対ミサイル防衛能力にも支障をきたすことになる。
イラン側はまさにこの敵側の弱みを正確に把握した上で、反撃に出た際にはまず形式が古くて廃番にする直前のミサイルを大量に発射する飽和攻撃を仕掛け、迎撃ミサイルの残量が少なくなった時点を見計らって極超音速(Hypersonic)ミサイルを繰り出したのです。
極超音速とは、超音速(Supersonic)と呼ばれるマッハ1を超えたスピードのミサイルに対し、定義上はマッハ5以上でだいたいにおいてマッハ7~10くらいにスピードを保てるミサイルのことです。
また極超音速ミサイルの中にも上の図表の右側に示すセジルのような弾道を描いて発射されるもの以外に、弾道を描かず比較的低空を滑るように飛んで行く滑空飛翔体と呼ばれるミサイルも、すでに実戦に投入しています。
今回のイスラエルに対する反撃の過程で、イランは世界で初めてコーラムシャー(カイバー型とも呼ばれる)という極超音速飛翔体を弾頭も装着して、イスラエルに着弾させた模様です。
ロシアはウクライナ戦線で威嚇ないし警告として、弾頭をつけていないオレシュニク型極超音速ミサイルを着弾させていました。
この極超音速ミサイルの特徴は次の図解が示すとおりです。
弾道(Ballistic)ミサイルとの最大の差は、高く打ち上げて放物線軌道を描くのではなく、大気圏の上端近くで空気密度が突然薄くなる層との境い目あたりをほぼ地表と平行に滑るように進むことです。