次のテヘラン空襲の写真に添えた文章は、イランで長年にわたって女性の地位向上運動に取り組んできた結果、2023年にノーベル平和賞も受賞したナルゲス・モハンマディさんが書いたものです。

まさにイスラエル首脳としては、自軍を「解放軍」として歓迎してくれるだろうと思っていたこの人が、イスラエル軍に対して侵攻をすぐやめてくれと声を上げたのです。つまり、パーレビ政権を慕っていたはずのイラン国民という「獅子」は立ち上がらなかったのです。

そもそも、ガザやヨルダン川西岸地区であれほどパレスチナ人に対して暴虐のかぎりをつくしている連中を解放軍として歓迎してくれる人たちがいると妄想すること自体、とんでもなく傲慢で見当はずれなものの見方です。

でも、完全に狂気に支配された国ですから「パレスチナ人など何千人、何万人殺しても自分たちが嫌われる理由になるはずがない」と勝手に思いこんでいたのでしょう。

イスラエル側にはそれ以外にもいくつかの誤算がありました。そのひとつが開戦後約半日間のイスラエルによる一方的な攻勢は、かなりの犠牲を覚悟した上でイラン側が見せた誘いの隙だったことです。

態勢を立て直してからのイランの反撃は、イスラエルが予想していたよりはるかに強烈でした。そこには、今回の主題であるアメリカの軍需産業がワイロ漬けで極端に開発能力が低下し、高くて粗末な兵器しか作れなくなっているという事情が介在していたのです。

性能競争で勝ったイランのミサイル

いつイスラエルに加担した米軍に直接攻めこまれるかもしれないことを認識していたイラン政府・正規軍・革命防衛隊は、短距離軽量級から長距離重量級まで多種多様なミサイルを豊富に備蓄しています。その概要は次の図表のとおりです。

さらに、米軍・イスラエル軍共通の弱点であるミサイルの性能自体が低水準であるばかりか、ありとあらゆる部品にいたるまでとんでもなく高価で、発注から製造までに長い時間がかかることも熟知しているのです。