中国もアメリカよりは割安なのですが、ソ連東欧圏ほど大きな差ではありません。巨大寡占企業がスポンサーとなって政治家を操って自分たちに都合のいい法律や制度をつくらせるアメリカ型の利権社会ではありませんが、中国も一党独裁の共産党幹部が既得権益グループに利権を分配する利権社会なので、やはり軍需物資は割高なのでしょう。

パランティアが挑む割高な軍需物資の謎

これは文字どおり皮肉なのですが「アメリカの兵器はなぜこんなに割高なのか」という謎にもっとも本格的に取り組んでいるのは、軍需産業アナリストたちではなく、暗殺優先順位策定アプリでイスラエル軍によるパレスチナ人ジェノサイドに大いに貢献しているパランティアです。まず次のグラフをご覧ください。

ここには、アメリカの軍需産業各社がロケット打ち上げプロジェクトを独占していた頃は荷重1キロ当たりの打ち上げ費用は高止まりしていたけれども、一般消費者を相手にEVを売ることから出発したイーロン・マスク率いる航空宇宙企業であるスペースX社が参入してから1キロ当たりのロケット打ち上げ費が劇的に低下したことが紹介されています。

さらに、パランティアは、アメリカの軍需産業の主流を占めていた企業が時代の変遷によってどう変わってきたかを、どんな顧客層を相手にしていた企業が多かったかから再検討します。次の2段組グラフの上段です。

一目瞭然「アメリカが冷戦に打ち勝つ1990年代初めまでは軍・民双方を顧客としていた企業群が軍需産業の主流だったが、その後はどんどん国だけを顧客とする企業が主流になって、アメリカの軍需産業全体が弱くなった」というわけです。

さらに、下段で「アメリカと中国の軍需産業大手を比較すると、アメリカは国防専業に近い企業が多いのに、中国は国防と民需双方で売上を伸ばしている企業が多い。アメリカの軍需産業は国という甘い発注者だけを相手にしていたのでコスト削減努力を忘れてしまった。だから、軍需産業再建には軍需・民需双方で売上を伸ばす企業を育てるべきだ」と結論します。