あらゆる無線情報の送受信、中継、傍受をおこなうレイドームは、現代空軍基地の中枢神経とも言うべき最重要施設です。その施設だけを狙い撃ちで破壊して、他の建物は無傷で残している理由はなんでしょうか。

「やる気になれば、戦闘機や爆撃機の格納庫、爆弾やミサイルの貯蔵庫、兵舎だって壊滅させることができるけれども、今回は中枢神経だけを狙った。次はもっと大きなダメージを覚悟しろ」という警告です。

そして、基本的に極超音速ミサイルに太刀打ちできるスピードの兵器をもっていない米・イスラエル連合軍には、有効な迎撃手段がないのです。

なぜ米軍は最強ではなくなったのか

なぜこんなに情けないことになってしまったのでしょうか。

表面だけ見れば、アメリカの国防予算は今でも他国の国防予算を圧倒しています。具体的な数字で言うと、2023年のアメリカの国防予算8770億ドルは、2位中国から12位イタリアまで11ヵ国の国防予算の合計額より大きいのです。

それなのに、15位まで降りて行っても出てこないイランに現代戦争の主力兵器であるミサイルの性能競争で負けるとは! その謎を解くカギが右側のグラフの中にあります。

2022年から2023年にかけてこの15ヵ国で国防予算がどの位増えたか(名目増加額)、そしてもし各国が購入した軍需物資がすべてアメリカ並みに高価格だったとしたら、それぞれの国は米ドルでいくら分の軍需物資を買ったことになるか(実質増加額)というグラフです。

当然、アメリカはいつも名目と実質の増加額が同じです。

当時すでにロシア軍による自国領土への侵攻に直面していたウクライナも、名目ではアメリカとほぼ同額の200億ドルの国防予算増加がありましたが、軍需物資が割安だったので、アメリカで買っていたとしたら1150億ドル分の軍需物資を買えたことが分かります。

基本的には、旧ソ連東欧圏諸国とアルジェリアでは軍需物資が非常に割安なことが明瞭に読み取れます。ほとんどの国で軍需物資はアメリカよりは割安ですが、ドイツ、イギリス、イスラエルのようにアメリカの軍需産業からの調達の多い国は、アメリカ以上に軍需物資が割高です。