研究チームが特に注目したのが「硫黄(いおう)」を含む物質です。

硫黄は、実は今の生き物にも欠かせない元素のひとつで、エネルギーを運んだり、さまざまな化学反応を助ける役割を担っています。

特に「パンテテイン」と呼ばれる分子は、現代の生物においてもエネルギーを運ぶ主役である「補酵素A(ほこうそえー)」の一部分としてとても大事です。

研究チームは以前の研究で、このパンテテインが初期地球の条件でも自然に合成できることを示しました。

今回の研究では、このパンテテインなど硫黄を含む物質(「チオール」と呼ばれます)を利用しました。

「チオール」とは、炭素や水素、硫黄を含む小さな分子のグループのことです。

これに「アミノ酸」を反応させて「アミノアシル-チオール」という特別な分子を作りました。

アミノ酸はタンパク質の材料になるとても小さな分子です。

しかし、アミノ酸はそのままではRNAとうまく結合できません。

そこで「アミノ酸を結合しやすくするための活性化分子」を使いました。

活性化分子には、NCA(アミノ酸N-カルボキシ無水物)、アミノアシル-アデニレート(ATPの仲間)、アミノニトリル(アミノ酸のもとになる分子)などが使われました。

これらの活性化分子を使い、アミノ酸とチオールを反応させることで、安定した「アミノアシル-チオール」を作り出したのです。

このようにして準備したアミノアシル-チオールを、今度はRNA(生命の設計図を伝えるリボ核酸という分子)の短い断片と混ぜ合わせました。

RNAとは、DNA(デオキシリボ核酸)と似ている分子で、生命の「設計図」の情報を運ぶ働きをします。

すると、驚くことに、特別な酵素(生体の化学反応を助ける大きな分子)や複雑な装置を使わなくても、RNA分子の末端部分にアミノ酸が自然に結合したのです。

この「結合」とは、アミノ酸がRNAの一番端っこに“ぴったりくっつく”ことを意味します。