しかし、保守内の左派の支持だけでは自民党政権の展望は開けない。政権を取るためには保守層右派の票を取り返す必要があり、そのためには石破首相をより保守色の強い総裁に切り替えなければならない。そこで起きているのが現在の石破おろしの動きと理解することができる。

その目論見は実現可能であろうか? 保守票の奪還に最も向いている候補と考えられる高市氏を例に挙げて考えてみよう。

今回、自民党に入れなかった人に、参議院選挙でもし総理が高市氏だったら自民党に投票していたかどうかを聞いてみた。また、逆に今回自民党に入れた人に、総理が高市氏だったら自民党に入れるのをやめたかどうかも聞いてみた。高市氏は自民党内で最右派に属するため、嫌う人もいるからである。表1がその結果である。

今年の参議院選挙比例区で自民党に投票しなかった人はサンプル中に1609人いる。このうち総理が高市氏なら自民党に投票していたかと問われて、投票していたと「思う」+「やや思う」と答えた人は243人であった。率にすると15.1%であり、前回調査とほぼ同じ結果である※6)。

一方、比例区で自民党に投票した人は246人いるが、このうち、総理が高市氏だったら自民党に投票しなかったと「思う」+「やや思う」という人が78人いる。率にすると31.8%でかなり高い。高いのは現在の自民党の支持層が保守内左派になったためであろう。しかし、母数の違いが効いて、差し引きすると243-78で165人の増加となり、得票率は上昇する。自民党の得票率は13%(=246/(1609+246))から22%に約10ポイント上昇する計算になる。つまり得票数は2倍弱になる。

人々は、思う+やや思うの回答通りに実際に行動するとは限らないが、変動幅は大きく、話半分としても5%ポイント上昇し、得票数は1.4倍程度になる。比例の得票率がこれだけ増えれば勝利と言ってよいだろう。この結果を見る限り、保守票の奪回はできそうである。