この図は間違いではない。リベラル側が辞任しなくてよいと言い、保守側が辞任すべきと答えている。平均値をとると、辞任すべきでないの赤の点線がマイナス0.178、辞任すべきの黒の実線がプラス0.232となる。辞任すべきでないと考える人を石破政権の支持者と考えると、石破政権はすでにリベラル政権である。そうだとすれば、自民党が両院議員総会を開いて石破おろしに躍起になるのも理解できるし、野党が石破政権退陣を迫らないのも自然な結果である。
2. 自民党の事情
しかし、そうだとすると1つ疑問が出る。図3の支持政党別の意見を見ると、自民党支持者でも石破首相は辞めるべきではないという意見が62%占めている。現在の自民党は、自分の党の支持者の6割が辞める必要はないと考える首相を、辞めさせようと奔走していることになる。これはなぜだろうか。
その理由は、自民党の支持者の中身が変質したためである。すなわち、自民党内の右派の支持者が自民党から離れ、現在、自民党支持者として残っている人々が保守内左派の人だけになった。図6は過去3回の選挙の時に、比例区で自民党に投票したと答えた人の政治傾向(保守度)の推移である。政治傾向とは図5での分布の平均値で保守の度合いを表す。
4年前の衆議院選挙で自民党に投票した588人の保守度は0.343であった。昨年の衆議院選挙の時の投票者(431人)の保守度は0.211に低下し、今年の参議院選挙の投票者(302人)では0.188にまで低下した。この間、比例区で自民党に投票する人の数は588人→431人→302人と一貫して減っており、得票率の減少とともに保守度は低下を続けた(0.343→0.211→0.188)。この調査で個人の政治傾向は変わっていないので、これは自民党の岩盤保守層が自民党から離れて他の党に移動したためと考えるしかない。
この間、国民民主党や参政党が登場して自民党から有権者を奪っていった。参政党投票者の保守度は0.409、国民民主党への投票者の保守度は0.270で自民党支持者より高い。現在の自民党支持者は岩盤保守層が抜けてしまった保守層内の左派だけなのである。それゆえ彼らの意向を聞けば石破首相は辞めなくてよいという結果が得られる