今回の偽情報の発端となったのは、大統領府情報局長アビオドゥン・オラドゥンジョイ氏名義で出された声明だ。
声明では「日本政府がナイジェリア人への特別ビザ発給に同意した」と明記され、現地メディアでも広く報じられた。
さらに、この声明のテキストは、大統領府公式サイトだけでなく、フォロワー数の多いイドリス情報・国家指導大臣が率いる同省の公式サイトやX、Facebookを通じても拡散された。
ナイジェリアの国策広報は情報・国家指導省が中枢を担っており、大統領府情報局とも連動する形で声明やキャンペーンが設計・発信される構造にある。今回のケースもその典型であり、外国ビザ利権疑惑のあるイドリス情報大臣が深く関与している可能性もある。
声明はSNS上で爆発的に拡散し、
「木更津市=ナイジェリア人の“新しい故郷”」 「故郷なのだから、移住できて当然」
と信じる人が続出。
ナイジェリア系YouTuberやTikTokerが木更津移住のメリットを紹介する動画を次々公開し、急速にトレンド化した。
現地では過剰な期待が膨らみ、ナイジェリア国内では“日本移住情報バブル”とも言える状態が生まれている。
さらに問題なのは、誤報が訂正されないまま放置されていることだ。
ナイジェリア大統領府の公式サイトでは「特別ビザ発給」の記述こそ削除されたが、発表タイトルは依然として「木更津市をナイジェリアの故郷に認定」と残され、誤解を助長している。
情報統制を担う4人のキーパーソン
この一連の誤報と情報拡散を支えているのは、政府広報ネットワークの中枢にいる4人のキーパーソンだ。
アビオドゥン・オラドゥンジョイ:大統領府情報局長。今回の声明の署名者で外交広報を統括 モハメド・イドリス:通信・国家指導大臣。政府広報戦略全体を統括し、UAEビザ問題で偽サイト誘導・汚職疑惑の中心人物 バイオ・オナヌガ:大統領特別顧問(情報・戦略担当)。ティヌブ大統領の選挙選から情報戦略を設計し、勝利に導いた立役者。今回、10万人を超える個人Xアカウントで誤情報を積極拡散 大統領公式ソーシャルメディア担当官。大統領の訪日成果のパンフレットにまとめ「特別ビザ発給」をPR。現在も訂正しないまま、拡散中。
情報・戦略担当のオナヌガ大統領特別顧問は今回のTICAD9(第9回アフリカ開発会議)に大統領に随行。横浜での会議終了後、Xでこう投稿している。