CSRD、CSDDDは企業に対して非財務情報の開示や、サプライチェーンを通したCO2排出量、児童労働などの開示を義務化する規制で、EU域外の企業にも影響するためサステナビリティ部門担当者は数年前から戦々恐々としていました。ところが昨今の脱炭素やESGの退潮を受けて企業負担の緩和、制度の簡素化に関する議論が欧州議会で進んでいます。
まず実施時期の延期が決定しました。続いて対象企業の従業員数を当初の250人や500人から1,000人以上の大企業にするなどの議論が進んでいたところ、今年5月にフランスのマクロン大統領、ドイツのメルツ首相が相次いで、簡素化ではなく廃案にするよう求めました。
この直後から、廃案を免れるためか従業員数に関しては3,000人以上、5,000人以上などの巨大企業を対象にするといった意見が出はじめました。対象企業の売上高も大幅に引き上げる方向となっており、EU域内で4億5,000万ユーロ以上などの案が出ています。
そして今回の共同声明です。貿易に不当な制限を課さないことや、非EU諸国の企業に対するCSDDDの懸念にも対処するそうです。具体的にどのような対応がなされるかは分かりませんが、前述のCBAM、そしてCSRD、CSDDDという3つのEUによる強力な脱炭素規制が、実施される前からかなりの部分で骨抜きになる可能性が極めて高くなりました。
他方、日本では2026年度から上場企業へスコープ3排出量を含むサステナビリティ情報開示が義務化されます。これは国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に従ってつくられたサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)がもとになっています。
ところが、ISSBを受けてスコープ3含むサステナビリティ情報開示義務化を議論してきたCSRDは延期され中身がさらなる骨抜きとなり、同じくISSBを受けて成立をめざしてきた米証券取引委員会(SEC)の気候関連情報開示規則は今年2月に廃案となりました。