CBAMは欧州排出量取引制度(EU-ETS)にもとづく炭素価格をEU域外から輸入される対象製品に課す制度であり、非関税障壁そのものでした。
数年前からメディアやESGコンサルさんたちが「今度はCBAMだ!てーへんだてーへんだ!日本企業は準備しないと!」などと煽っていましたが、今年に入ってEUではCBAMを簡素化する方向で議論が進んでおり、対象事業者が当初想定から9割以上も減ると言われています。CBAMの対象製品は鉄鋼、アルミニウム、肥料、セメント、水素、電力ですが、日本企業でEUの輸入量上位10%に入る企業が何社存在するのでしょうか。
これら「最近合意された最低限の例外の拡大」に加えて、今回の共同声明では追加的な柔軟性を提供するとしています。さらに簡素化や適用除外が加わるのであれば、対象となる日本企業はほんのひと握りになるのでは。
他方、日本国内で2026年度から本格化するGX-ETS(排出量取引)の最大の目的がこのCBAMへの対応だったはずです。CBAMの全容が見えてきて、ほぼ日本企業に影響がないことが判明したらGX-ETSや今後のカーボンプライシングの大義名分がなくなります。
GX-ETSに参加を強いられる400社の日本企業の中でCBAMの対象になる日本企業がいったい何社あるのでしょうか。排出量取引が企業価値向上につながるのであれば自由参加にすればよいのです。
12. 欧州連合は、企業サステナビリティデューデリジェンス指令(CSDDD)および企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が大西洋横断貿易に不当な制限を課さないよう確保するための努力を講じることを約束する。CSDDDに関しては、中小企業を含む企業への行政負担軽減に向けた取り組み、デューデリジェンス不履行に対する統一的な民事責任制度の要件および気候移行関連義務の見直し提案を含む。欧州連合は、関連する高品質な規制を有する非EU諸国の企業に対するCSDDD要件の適用に関する米国の懸念に対処するため、取り組むことを約束する。