1つ目は生産能力があるならなぜ全部出さないのか?という疑問。たしかに任天堂は「1,500万台の生産能力はある」と説明しているが、これは最大能力であって確実に流通に乗る数ではない。市場の需要の急激な変化、物流網の制約、小売在庫の偏在などを考慮すれば、一気に出すことには大きなリスクが伴う。
2つ目はそういう事情があるなら事前に説明してほしいという意見。これはもっともだが、企業が発売前に生産計画を細かく開示することは、競合や市場にとって極めて大きなリスクとなる。需要が不確定な状況で出荷台数を宣言することは、かえって株主や取引先に誤解や混乱を与える危険がある。
3つ目は転売屋がはびこるのは企業の責任では?という指摘。これについては任天堂も真剣に対策している。Switch 2では、購入本体が初回インターネット接続された時点でアカウントに紐づく仕組みを導入。さらに、従来あった保証書を同梱せず、レシート提示を求めるように変更した。この結果、新品未開封で保証付きという転売の付加価値は消滅した。
コミュニケーション戦略の改善が鍵
Switch 2をめぐる品薄問題の本質は、供給不足そのものよりも説明不足にある。ユーザーが怒るのは買えなかったことそのものではなく、買えると思っていたのに、買えなかった、というギャップだ。
だからこそ、任天堂にはもう一歩踏み込んだコミュニケーションが求められる。すべてを開示する必要はないが、初回出荷分が限られている理由や今後の供給見通しなどを、FAQやサポートページの形で丁寧に説明することは可能だ。
これにより、ユーザーは知らされなかったという怒りから、なるほど、仕方ない」いう理解へと移行できる。過去の反省も踏まえ、次世代ハードや話題商品においては、期待を煽るだけの広報ではなく信頼を積み上げる広報へと転換していくべきだ。
最終的に大切なのは、誤解されない構造を作ることである。そのためには2つのアプローチが必要だ。