Switch 2のような話題性の高い商品が売れると、任天堂は一時的に出し惜しみしているように見える戦略家、にも映る。しかし、その裏で起きているのは、買いたい人が買えず、売りたい人が売れず、楽しみたい人が遊べないという機会損失の連鎖なのである。
また、任天堂のビジネスモデルはハードを普及させ、ソフトとサービスで回収する構造にある。Switch 2が多くの家庭に届けば、ゲームソフト、追加コンテンツ、オンライン課金、キャラクターグッズなど、あらゆる形で収益が発生する。
だからこそ、ハードはできる限り早く、広く行き渡ることが望ましい。出荷数をあえて絞ることが目的であるなら、ソフトの販売機会を自ら潰してしまうことになる。そんな非合理な戦略を、任天堂のような大企業が長期的に採るとは考えにくい。
しかもゲーム機器では、ハード発売と同時に発売されるローンチタイトルの売れ行きがその後の評価を大きく左右する。初動でハードが普及しないということは、ソフトメーカーの販売戦略にも悪影響が出る。
結果としてソフトメーカーが離れ、ソフトラインナップが弱くなれば、ユーザーにも選ばれなくなるという負の循環が始まる。
出せば出すほど儲かる構造の中で、あえて売らない選択肢があるとすれば、それはよほどの事情がある時だけだ。つまり、出したくても出せない事情があったと考える方が、自然なのである。
とはいえ、外から見ると任天堂がうまく話題を演出しているように映るのも無理はない。抽選販売、即日完売、SNSでの悲鳴。これらは確かに話題づくりにも見えるし、ブランドの神秘性を保つような効果すら生んでいる。
だが、これは結果的にそう見えるだけであり、意図的な演出とは異なるセキュリティや品質、流通戦略の結果として、自然と戦略っぽく見える現象が生まれてしまっただけなのだ。
それでも品薄商法を疑う人へ
「出したくても出せない?いやいや、出し惜しみして盛り上げているだけでしょ」という声は依然として多い。ここで想定される異論に対して、構造的に答えておきたい。