北海道の信用金庫の貸出先を産業別にみると、一次産業はほとんどない。農業向けが少ないのは農協への遠慮かな。地方創生の目玉のひとつは日本農業の復活のはずなんだけど、ほとんど掛け声だけだ。信用金庫がこの5年間で増やしたのは不動産業。それは金利もそこそこで期間も長いから金融業の狙いとして間違ってないのかもしれないけど。北海道の信用金庫としては淋しいですね。

ワタナベ君:まとめると、こうなりますか。3月期決算は見せかけ良好。しかし一皮むくと長期国債という爆弾ではないけれど、じわじわ効いてくる毒を抱えている。本業でどうやって生きていくのかの展望がない。一次産業への融資が極端に少ない等、地方創生への貢献が見えない。株式と外債については研究もなく、経験も積まれてない。地方創生には支店の会議室で創業セミナーをやってお茶を濁すだけ(言いすぎか?)。

教授:いろいろ考えている経営者も多いはず。このままじゃいかん、と思っている。本当はウチの信用金庫は赤字じゃないの、もっと悪くて債務超過では、と思っているけど打つ手を思いつかない。

しかし、こんなトップの迷いに若い人達は敏感なんだ。これは地方銀行も同様だ。入社3年目ぐらいの離職率が高い。金融機関は安定しているからという親の押しで就職してみたものの、仕事は全然前向きでなく面白くない。自分の人生をかけるに値しない。そう思ってしまうのだろう。

ワタナベ君:なんだか自分の事を言われているみたいで困りました。でも信用金庫は地域からお金を集め、地域のためになる企業・組織にそれを供給する。その原点は失われていません。“地域と生きる”というスローガンは不滅だと思います。

教授:それには同意するね。信用金庫は三つの顔を持っている。一つは中小企業のための機関。第二は地方の機関。第三は、第一と第二の総括でもあるが、株式会社でなく協同組合だ。この三つを大事にしなければ。理事長が東京に出張して信金中金を訪ね、ウチにも資本注入を、なんて頼んでいるとしたら、まったく逆方向だね。信金中金だって全国にばらまく程たくさんのお金を持っているわけではない。