「逸見石(へんみいし)」または「ヘンミライト」は岡山県備中町の布賀鉱山で初めて発見され、現在も布賀鉱山でわずかしか産出していない、名実ともに日本独自の希少鉱物です。

逸見石の名前の由来は、親子で布賀鉱山の鉱物を研究していた、鉱物学者の逸見吉之助(へんみきちのすけ)氏逸見千代子(へんみちよこ)氏の名前です。

1986年に化学者の中井泉氏らによって発表され、その美しさから一躍注目を浴びました。

日本で産出する鉱物は茶色や無色など、比較的地味な色合いをしていることが少なくありませんが、逸見石は透明感のある鮮やかな青い色をしています。

国産鉱物をあまり知らない鉱物コレクターに見せると「え、こんな派手な石が日本で採れるの!?」と驚かれることも。

特に、方解石(カルサイト)と共生している逸見石は、鉱物コレクターの間では「ルリスズメタイプ」と呼ばれ、人気を集めています。

方解石のサンゴ礁の中を泳ぐルリスズメダイのような逸見石は、南国の海をそのまま切り取ったかのような美しさがあります。

「ルリスズメタイプ」の逸見石
「ルリスズメタイプ」の逸見石 / credit:mindat.org

南部石(ナンブライト)

南部石(ナンブライト)
南部石(ナンブライト) / credit:Wikipedia

「南部石(なんぶせき)」または「ナンブライト」は1972年に発表された鉱物です。

岩手県大野村の舟小沢鉱山で発見され、旧地質調査所に在籍する鉱物学者である吉井守正氏などにより発表されました。

南部石の名前の由来は、東北大学で鉱物学者として活躍していた南部松夫(なんぶまつお)氏の名前です。

透明感のある鮮やかな赤~オレンジ色をしており、とても美しい鉱物です。

また、南部石が発見されてからしばらくして、南部石の中のリチウムの半分以上がナトリウムに置き換わった新鉱物が発見され「ソーダ南部石」と名付けられました。

つまり、南部氏は2種類の鉱物の名前の由来になった人物なのです。