したがって、今回発見された10万年以上もほとんど傷まないまま残っていたDNAは、微生物がわずかに生命活動を続けてDNAを絶えず修復してきた証拠であると考えられます。
これは、「完全に停止した生命活動」では説明がつかず、「わずかながら活動を続けている状態」こそが微生物の驚くべき長寿を可能にしていたことを意味しています。
今回の発見はさらに、地球を超えて宇宙における生命探査にも重要なヒントになります。
もし地球の極寒環境において、特別な仕組みを使わずに微生物がわずかな活動を保ちながら10万年以上生き続けられるのであれば、火星や木星・土星の衛星(エウロパやエンケラドゥスなど)といった極寒の天体でも、同じように長期間生き続けている微生物が存在する可能性があるからです。
地球外生命を探す研究では、生命がどれほど過酷な環境でも生き延びられるかが重要なテーマの一つです。
今回の研究成果は、「生命が存在できる環境の範囲を、私たちがこれまで考えていた以上に広げる必要があるかもしれない」という重要な示唆を与えています。
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元論文
Traits enabling persistence of living Promethearchaeota in marine sediments frozen for over 100 kyr
https://doi.org/10.1101/2025.03.11.642519
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部