入院期間の長期化が一人当たり高齢者医療費を押し上げた
他方、在宅死亡率が低い、すなわち病院や施設での死亡率が高い福岡県や北海道に象徴される県では、一人当たりの高齢者医療費が高額になる傾向が読み取れる。
福岡県のそれは全国平均よりも年間で22万円、北海道でも16万円も多くなっている。これはそれだけ高齢者の重病患者が増えたからではなく、看護する家族力が乏しいために、高齢者の入院期間が長期化しているからである。
農業県でも小家族化で看取り力が低下した
図3の左上の象限には北海道を除くと、九州の農業県が集中しているが、元来は家族数が多く、三世代同居率が高いところであった。
しかし、高度成長期を過ぎて、三世代世帯のうちの子ども世帯が別居(移動)したために、親夫婦が高齢世帯として取り残され、どちらかが体調不良になると、入院・入所を選び、長期化するようになった。
在宅での看取り力が落ちた
図4は厚生労働省が2010年に発表した「在宅死亡率と病院・診療所死亡率の推移」であるが、高度成長が終わって3年後の1975年からこの両者の関係が逆転していることに気がつく。
それまでの高齢者はその多くが自宅で最期を迎える比率が高かったが、高度成長期の15年間が転勤や地方勤務に便利なように三世代同居世帯を縮小させて、そこから別れた子ども世帯を増加させたために、在宅での親の看取りが出来なくなったのである。

図4 在宅死亡率と病院・診療所死亡率の推移 (出典)金子、2013:147.
社会診断
統計的には、「高齢者一人当たり医療費」 を押し上げる変数は、「高齢単身世帯率」「離婚率」「平均在院日数」などであるから、文字通り社会全体の年齢構成の変化と小家族化が医療費総額を押し上げていたことになる(金子、2013:145)。
少子化について
さてこの時代、国立社会保障・人口問題研究所は、2年に一回の頻度で500年間の「将来人口推計」を発表していた。