誰かを研究するのが最終的目標ではないのと同様に、「用語をめぐって闘争するのではなく、用語を使って議論」(同上:32)し、何かを研究した成果を産み出したい。50年経過した今日、それがどこまで実現したかは分からないが、この気持ちを忘れたことはない。

都市研究を課題とする

『社会学的想像力』の精読により、社会学のやり方が少しは見えてきたので、4年生の卒業論文のテーマ設定では「都市研究」を選んだ。これも恩師が都市社会学を標榜されていたことにより、自然の成り行きであった。

4年生の夏から、1月10日提出の卒業論文のためにまずは「都市」とは何かを学ぶことにした。素材としては、当時の都市社会学の重鎮であった磯村英一『人間にとって都市とは何か』(NHKブックス、1968)に取り組んだ。磯村64歳という円熟期の作品ならではの幅広さと奥深さが同居している入門書であり、文字通り精読した。

都市とは何か10か条

特に冒頭に初学者向けとして「都市とは何か10か条」がまとめられていたので、繰り返し読んだ記憶がある(磯村、1968:15-20)。

都市は人間の集積(accumulation)である。 都市は人間が定着(settle)する空間である。 都市は人間の生活機能のメタボリズム(metabolism)によってつくられる。 都市の人間は生活に移動性(mobility)をもつ。 都市は人間に第三の空間(public space, mass socialization 盛り場的空間)を与える 都市は人間を組織(system)のなかに入れる。 都市は人間の生活を一日という周期(life cycle)で規定する。 都市は人間の定着コンセンサス(residential consensus)でその範域を決定する。 人間は都市の空間を変形(renovation)する。 都市は人間のパーソナリティの表徴シンボル(symbol)である。

都市の生活空間