その後の各紙の報道を読んでも、安倍氏は「現金での還流をやめよう」とだけ述べたのであって、「不記載をやめよう」とか「適切に記載しよう」といったのではないらしい。報告書に記載さえすれば還流そのものは適法なのに、なぜ安倍氏は「不記載はやめよう」ではなく「還流はやめよう」といったのだろうか。筆者はこのことを、安倍氏自身も「不記載」を知らなかったことの証左だと考えている。

さて、改めてこれまで起訴された者を挙げれば以下の9名で、牛久保秘書までは、公選法違反の絡んだ堀井氏を除いて、全員が不記載額3000万円で線が引かれていた(25年8月15日の『毎日記事』)。

旧安倍派元会計責任者 (約13.5億円) 在宅起訴―有罪確定 旧二階派元会計責任者 (約3.8億円)  在宅起訴―有罪確定 大野泰正元参議院議員 (約5100万円) 在宅起訴―初公判期日未定 池田佳隆元衆議院議員 (約4800万円) 逮捕・起訴―初公判期日未定 谷川弥一元衆議院議員 (約4300万円) 略式起訴―罰金100万円 二階元博氏の元秘書  (約3500万円) 略式起訴―罰金100万円 旧岸田派元会計責任者 (約3000万円) 略式起訴―罰金100万円 萩生田光一氏元政策秘書(約1900万円) 略式起訴―罰金30万円 堀井学元衆議院議員  (約1700万円) 公選法違反と併せ略式起訴―罰金百万円

注)()は不記載金額

次に「在宅起訴」「略式起訴」「逮捕・起訴」の違いは以下のようである。

「在宅起訴」:身柄の拘束をされずに、自宅で普段通りの生活を送りながら刑事事件の捜査が進んだ後、検察官によって起訴されること 「略式起訴」:検察官が裁判所に対し、正式な裁判手続によることなく、書面での審理のみを以て100万円以下の罰金刑もしくは科料の刑罰を言い渡す裁判手続を求めること 「逮捕・起訴」:逮捕されると、通常は警察署内にある留置場(または拘置所)から出ることを禁止され、最長72時間(検察官の請求を裁判所が許可すると最長20日間)は外部との連絡も自由にできない。さらに起訴されると、釈放または保釈が認められない限り、裁判終了まで出られない

そこで議員の「在宅起訴⇒公判」・「逮捕・起訴⇒公判」と「略式起訴」の違いを勝手に想像すれば、公判に進む「在宅起訴」と「逮捕起訴」の議員には、「②使途」に政治資金以外への流用の証拠がある一方、「略式起訴」の議員では、私的流用の証拠はないが不記載金額が大きい、ということではなかろうか。