ここで太字にした「不起訴の判断」は「犯罪を証明できないとの判断を一転させた」との意味に取れるが、牛久保氏は不記載を認めていたが、その金額が3000万円の基準以下だったから「起訴猶予」になったのだから、「起訴猶予の判断」と書くべきであろう。いずれにせよ、「国民の声」で「基準が動き」起訴されるのは異様だ。が、そもそもが「形式犯」、金額の多寡や常習の度合いも基準になり得るか。
それに続く「萩生田氏も説明責任を果たす姿勢は見られない」とは『朝日』らしい蛇足だ。管見の限りだが、萩生田氏は会見やネット番組で不記載を知らなかったことや還流金の処置などを詳細に説明しており、『朝日』も同記事で「萩生田氏をはじめ基準を下回った議員らは、いずれも不起訴とした」と書く。つまり、特捜は萩生田氏が「罪を犯した疑いがない」と判断し、「不起訴」にしたのである。
だが、今般の牛久保秘書の件で基準が約1900万円に下がった以上、約2700万円の萩生田氏、約2400万円の山谷えり子氏、約2000万円の橋本聖子氏、約1900万円の武田良太氏らが、今後「国民の声」に押し切られた特捜によって、一転「略式起訴」される可能性がないとは言い切れない。不記載問題の終息には「特捜の捜査結果を尊重せよ」との「国民の声」が必要になるということだ。
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そもそもその東京地検特捜部(特捜)は、安倍派パーティー券のノルマ分を上回る収入について、23年12月の事件発覚初期から、① 還流金額、② ①の使途、③ 政治資金収支報告書不記載への議員の関与、の3点に重点を置いて捜査を進めていたことが報じられていた。
中でも重要なのは②と③であろう。なぜなら、還流金額の多寡に関わらず、収支報告書に適切に記載されてさえいれば、政治資金規正法に違反することはないからである。
そこで筆者が不可解なのは、安倍派の会長になって間もない22年5月の安倍派パーティーの直前に安倍氏が、「現金で戻すという不透明なことはやめよう」と述べたとされる件だ。7月の暗殺後に「還流廃止は宙に浮いてしまい」(24年1月21日『読売』)、安倍発言を誰が反故にしたかが世間を賑わせた。