さらに2000年には、四国~関西間に紀伊水道連系線⑧が新設された。これは徳島県に建設された橘湾火力発電所の電力を関西電力に送電することを主な目的として設けられたものである。四国も関西も同じ60Hz系統であるにもかかわらず、一度直流に変換し、再び交流に戻して連系している。
直流変換器は、設定された値の電力だけを送電する仕組みである。そのため、橘湾火力発電所で発電した電力のうち、関西電力へ送電する分だけを変換器で設定して送電することが可能である。もし紀伊水道を交流で連系してしまうと、中国電力と関西電力の双方と交流で二か所連系することになり、個別の送電電力を調整できなくなってしまう。
連系線が支える周波数の安定
専門的な内容が続くが、もう少し説明を加える。図3は同じ時間帯における四国~関西直流送電線と四国~中国交流送電線の潮流実績である。直流送電線はほぼ一定の値(約-72)を示しているが、交流送電線は小刻みに変動(-1150~-1300)している。
これは先に述べたとおり、直流送電線は変換器によって設定された値で一定の電力を送電する仕組みであるのに対し、交流送電線は四国電力管内における周波数調整の過不足分を、中国電力と分担し合っているためである(正確には、60Hz系統の電力会社全体で分担している)。その結果、交流送電線の潮流は小刻みに変動する。
各電力会社は交流で連系することによって、相互に助け合いながら周波数を一定に保っているのである。

図3 同じ時刻の交流連系線と直流連系線の潮流実績の違い
しかし、直流送電線に周波数調整機能が全くないわけではない。交流の連系線が故障などで停止した場合には、直流送電線が肩代わりして周波数調整を行えるようになっている。具体的には、連系線の両端で周波数偏差を検出し、その偏差から四国電力系統内における電力の過不足量を計算する。その過不足量を直流送電線の潮流に反映させることで、交流連系とほぼ同等の周波数調整効果を得ることができる。