bgblue/iStock

2024年11月9日20時22分、四国電力管内で最大36万5,300戸の停電が発生した。今回の停電は、送電線が停止してその先に電気が送れなくなったことによるものではなく、他電力との連系線の制御がうまくいかず、四国管内の需給バランスが崩れて周波数が60Hzから大幅に低下したため、大規模な停電に至ったものである。

今回はこの事故の詳細を解析し、電力系統の周波数を一定に保つことがいかに困難であるかを見ていきたい。

周波数を一定に保つ難しさ

電力は「発電する量=消費する量」のように、常に消費量に合わせて発電しなければならず、そのバランスが大きく崩れると大停電に至ることがあるといわれている。

実際、2018年9月6日に北海道胆振東部地震が発生し、苫東厚真発電所が停止して北海道管内の供給力が不足し、その数分後に北海道管内全体が停止する事故が発生した。需給バランスが崩れると、送電線の事故が発生していない広いエリアまで停電が及ぶことが実証されたのである。北海道の停電は、99%の世帯が復旧するまでに2日間を要した。

現在は様々な発電会社が発電事業に参入している。系統全体の需給バランスが崩れないようにするため、各発電会社には30分ごとの発電量を計画し、その値を守ることが定められている。しかし、実際の周波数調整のための出力制御は30分間隔では遅すぎる。5分間隔でもなく、5秒間隔で行われているのである。

5秒周期で各電力会社の中央給電指令所において、0.01Hz単位まで電力系統の周波数を測定し、電力量の過不足を計算する(周波数のHzのずれから電力MWの過不足量を算出する)。その過不足量を周波数調整能力を持つ発電所に割り当て、5秒周期でオンライン出力制御を実施する。実際にこのオンライン出力制御を担っている発電所の多くは、東京電力をはじめとする大手電力会社の大型火力・水力発電所である。新規参入の発電所のほとんどは30分間隔での管理にとどまっている。