調査では、参加者に体のいろいろな部位を示して、「もしこの部位を失ったら、生活がどのくらい不便になると思いますか?」という質問をしました。
また別の参加者には、「あなたが法律を作る立場なら、この部位を失った人にはいくらの補償金を支払うべきだと思いますか?」という質問をしました。
他にも「もし自分が誰かにこの部位を傷つけられたら、どのくらい怒りを感じますか?」といった質問もしました。
質問内容は少しずつ違いますが、どの質問も「その体の部位が失われることの深刻さ」を確かめるものです。
具体的に評価してもらった部位は、「腕」「足」「目」「耳」「鼻」「指一本」「奥歯一本」など、古今東西の法律に共通して登場するさまざまな体の部位です。
これによって研究チームは、「法律と一般の人々の直感的な感覚がどれくらい似ているか」を比較できました。
その結果、とても興味深いことがわかりました。
一般参加者が直感的に下した判断と、各時代・各地域の法律で定められた補償の額には驚くほど共通する傾向があることがわかりました。
つまり、「どの部位がより重要で価値が高いか」という順位付けが、現代人の直感でも歴史上の法でもほぼ一致したのです。
また文化の違うはずのアメリカ人とインド人の回答も強く相関し、さらにそれらは中世ヨーロッパの法典や現代アメリカ・韓国・アラブの法律による評価とも一致しました。
例えば、論文では「親指は小指より重要」「目を失うことは奥歯を失うより深刻」と示されており、プレスリリースでも「人差し指は薬指より大事」「片目の損失は片耳の損失より重大」といった例が挙げられています。
さらに「親指と小指を比べたとき、どちらが重要と感じるか」という細かな比較についても、人々の直感と法の定める価値は概ね一致していました。このような傾向は統計的な解析でも有意な結果として裏付けられています。
体の価値を決める人類の「物差し」
