研究チームはこの予想を確かめるため、実際に過去のさまざまな法律と現代の人々の感覚を比べる調査を行うことにしました。
1400年変わらない価値観

研究チームはまず、文化や時代の異なる5つの法律を選びました。
1つ目は、今から約1400年前、紀元600年ごろのイングランドにあった「アセルベルヒト法」という古い法律です。
これは、ケント王国のアセルベルヒト王が定めた法律で、人にケガをさせた時の償いの方法が具体的に記されています。
2つ目は、13世紀のスウェーデンにあった「グータ法」という法律です。
これはスウェーデンのゴットランド島で使われていた法律で、やはりケガをさせた部位ごとに、支払うべき罰金や償いの金額が細かく決められていました。
残りの3つは、現在も使われている現代の法律です。
選ばれたのは、アメリカ合衆国のインディアナ州、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)の「労災補償法」というものです。
労災補償法とは、仕事中にケガをした人がもらえる補償金の額を決めている法律です。
例えば、インディアナ州の法律では、腕や足を失った時にもらえる補償金の方が、指を一本失った時よりもずっと高く設定されています。
これは「腕や足の方が、生活への影響が大きい」と考えられているからです。
このように、古代や中世の法律から現代の法律までを比べることで、研究者たちは「体の部位ごとの価値に共通する基準があるか」を調べることができました。
次に研究チームは、「法律の専門家ではない普通の人たちも、法律と同じような感覚を持っているのだろうか?」という点を確かめようとしました。
法律を決めるのは専門家ですが、一般の人も法律と似た価値判断をしているなら、人間の心には普遍的な価値基準があるかもしれないからです。
そこで研究チームは、アメリカとインドで、18歳以上の一般の人614人を対象にアンケート調査を行いました。