ウェアギルドとは、「人の値段」という意味です。

これは、「体の部位ごとに金額を決めて、相手を傷つけたときにその金額を支払って償う」という方法でした。

同じように、古代中国やニューギニアの部族でも、「ケガの程度に応じた償い方」を法律や習慣として定めていました。

例えば、古代メソポタミアの「ウル・ナンム法典」には、こんな例があります。

「もし相手の鼻を切り落としてしまったら、銀40シェケルを払わなければならない。一方、歯を折った場合は、銀2シェケルを払えばよい」

つまり、鼻のほうが歯よりもずっと高い金額になっていますね。

これは、鼻を失うことのほうが歯を失うより生活に与える影響が大きい、という判断があったからです。

このように、人類は昔から「ケガの程度や体のどの部位がどれほど重要か」に応じて、償い方や金額を決めてきました。

これまで多くの学者たちは、「こうした体の価値を決める基準は、文化によってまったく異なるはずだ」と考えていました。

実際、食べ物や生活習慣、考え方が文化によって違うように、「体のどこを大切だと思うか」という考え方も、文化によって違うだろうと思われてきたのです。

ところが、今回の研究チームは、この考え方に新しい仮説を提案しました。

彼らは「実は人間には、どの体の部位がどれだけ大切かについて、文化や時代を超えた共通の直感があるのではないか?」と考えました。

例えば、私たちは「指を1本失うより腕を1本失うほうが大変だ」と直感的に理解しています。

これは、腕の方が指よりもずっと多くのことに使えるからです。

こうした考え方は特定の文化だけに限らず、多くの人が同じように感じる可能性があります。

つまり、人類が進化の中で共通して身につけた、「体の部位が生活に与える影響を自然に判断する力」があるのではないかと考えたのです。

もしこの仮説が正しいなら、古代から現代まで、様々な地域や文化、さらに専門知識を持つ法律の専門家だけでなく、専門知識を持たない一般の人々においても、「体のどの部分がどれほど大切か」という評価に共通のパターンがあるはずです。