なぜなら、実際に固体を極端に高温へ加熱すると、エントロピー破局に到達する前に、必ず別の要因(小さな欠陥や表面の融解など)によって固体が崩壊し、液体になってしまったからです。
ある意味で理論的な限界は存在するけれども、誰もその「究極の限界」を目にしたことがなく、それはまるで「蜃気楼のような幻の限界」だったと言えるでしょう。
こうした長年の疑問に、今回の研究チームが新たな視点で挑みました。
これまでの研究とは全く異なる特殊な条件を作り出すことで、エントロピー破局を回避し、「固体の限界」を突破しようと試みたのです。
研究者たちは本当に「固体の限界」を超えることができたのでしょうか?
金はなぜ融点の14倍でも「固体」を保てたのか?

固体の温度限界を超えることなど、本当に可能なのか?
この謎を解明するため研究者たちはまず、非常に純粋で、厚さがわずか50ナノメートル(ナノメートルは1メートルの10億分の1)という、極薄の金の薄膜を準備しました。
なぜここまで薄くする必要があるのかというと、金属が厚いと熱が内部まで伝わるのに時間がかかってしまい、瞬間的な高温加熱の条件を作り出せないからです。
極薄の薄膜であれば、一瞬で熱が金属全体に伝わり、均一で安定した実験条件を作ることができます。
次に、この極薄の金の薄膜に対して、「超高速レーザー」という非常に短い時間で強力なエネルギーを与えられる特殊な装置を使って熱を加えました。
このレーザーが薄膜を加熱する時間はわずか45フェムト秒です。
フェムト秒とは、1秒を1000兆分の1にした極めて短い時間で、これは光が人間の髪の毛1本の幅を横切るのにかかる時間よりもさらに短いほどの一瞬です。
想像を絶する短さですが、この一瞬の間に金の薄膜に非常に大きなエネルギーが集中して与えられ、温度が急激に跳ね上がるのです。