なお、共著者は地球物理学の竹内均と飯田隼人、気象学の根本順吉、医療史の立川昭二、食料問題の西丸震哉であった。
「地球寒冷化」と「地球温暖化」は同じ原因か
それが、全く突然に手のひらを返したように、二酸化炭素濃度が増え続けたら「地球温暖化」が生じるというアメリカ発の情報が世界を駆け巡った。
この辺りの事情や理由を、私は北大の環境科学研究科に所属する専門家やいくつかのパネルディスカッションで一緒に登壇した環境の専門家に繰り返し尋ねたが、納得のいく回答は当時も今でも得られないままである(金子、2012)。
「懐疑派」を押し通す
それで私はこの20年来「懐疑派」なのだが、気象学をはじめ自然科学には素人なので、あくまでも知識社会学を通してみた「二酸化炭素地球温暖化」の言論世界のあり様についての「懐疑派」に徹してきた。
理由の一つは、長い期間でいえば産業革命期から大気中の二酸化炭素濃度は一貫して増加しているのに、なぜ1958年から1988年まで「地球寒冷化」論が隆盛であったのか、そして1989年からなぜ「地球温暖化」論が論壇を席巻したのか。この根本的疑問についても、「地球温暖化」論に与する大気物理学者からの明瞭な回答はない。
一人で「寒冷化」も「温暖化」も論じた人もいる
従来は1958年からの図1が多く用いられてきたが、この十年来はグラフの基準年が1990年に設定された。それでも排出量は右肩上がりであり、直近では420ppm(0.042%)までくらいに上昇している。
二酸化炭素の排出量が恒常的に増大した時代に「地球寒冷化」論を奉じていたにもかかわらず、1989年からはいきなり「地球温暖化」論に転じた気象学者は枚挙にいとまがない。同じ人が「地球寒冷化」と「地球温暖化」の本を出したこともある(根本、1981;1989)。
simulationとdissimulation
仕方がないから私は、「地球温暖化」論で多用されるsimulation(シミュレーション)は、本来の意味としては「そうでないのに、そうであるふりをすること」であるからであろうと解釈した。