この研究はプランク以前にも多くの研究者が挑戦していました。しかし、どういうわけか温度と色の関係を1つの方程式で表現することが誰にもできなかったのです。

普通に考えると、実験結果から、温度(エネルギー量)と光の色(波長)の関係を書き出していき、この数字にあった方程式を作ればいいだけなのだから、意外と簡単にこの研究は完成しそうな気がします。

ところが、どの研究者が作った方程式も、なぜか答えが長波長(赤い光)になるほど実験結果とズレてしまったのです

黒体放射の測定グラフ。縦軸はエネルギー量、横軸は波長を表す。温度ごとに波長のピークは決まっていて、それは温度があがる程短くなっていく(上)。黒体放射の温度ごとの色。温度が高いほど青に近づく(下)。この結果を方程式にするために物理学者たちは頭を悩ませた。
黒体放射の測定グラフ。縦軸はエネルギー量、横軸は波長を表す。温度ごとに波長のピークは決まっていて、それは温度があがる程短くなっていく(上)。黒体放射の温度ごとの色。温度が高いほど青に近づく(下)。この結果を方程式にするために物理学者たちは頭を悩ませた。 / Credit:4C,Wikipedia Commons/natural science

なぜ波長が伸びるほど、計算と実験結果はズレてしまうのでしょうか?

波長(波と波の間の幅)が短くなると、振動数(ある区間内で波打つ数)は増えることになります。実験結果と方程式のズレは、研究者たちの予想よりも振動数が大きいときにエネルギー量が大きくなってしまうことを意味していました。

そこでプランクは、もっとも単純な解決策として、振動数に定数を掛けるというアイデアを採用します。

光が1回振動するときに現れる最小エネルギー量を実験結果から導き出し、定数として方程式に組み込んだのです。

それが「E = hν」という数式です。

Eとは光のエネルギー量、ν(ギリシャ文字「ニュー」)は光の振動数を表します。そしてhとして導入されたのが、プランクが実験から導き出した最小のエネルギー量「プランク定数」です。

プランク定数hは6.626 × 10-34という恐ろしく小さい値で、日常的なスケールではまず気づくことのできないものです。