歴史で学ぶ量子力学【改訂版・1】 ※本記事
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・2】
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・3】
歴史で学ぶ量子力学【改訂版・4】

はじめに 「量子力学」を考える上での注意

量子力学が難解な学問という認識は、誰もが抱いているでしょう。

では、なぜ量子力学は難しいのでしょうか?

その理由は、量子力学が本来は頭の中にイメージできるような概念を持っていないためです。

私たちの見るという行為は、基本的に光の反射で成立しています。しかし光子と同じサイズの世界を考えたとき、見るという行為は意味を持ちません。そもそもそこに視覚的なイメージは存在しないのです。

とはいえ、量子力学に関するさまざまな図解やたとえ話は、誰でも一度は目にしたことがあると思います。

これが大きな混乱の元であり、実のところ、図解で示される量子力学の世界はすべて厳密には正しくありません。

物理学とは、ニュートンからはじまり、目に見える現象の数々を説明する学問として発展してきました。

ところが、あるときこの理論が崩れ去り、既存の理論では一切説明のつかない事実が次々と発見されたのです。

それはたとえば、光が波として見ても、粒子として見てもどちらでも成立してしまう、という問題です。

これは頭でイメージしようとしても(あるいは図に描こうとしても)、思い描くことが不可能です。

そのため、物理学者たちはこのイメージできない新しい理論を「量子力学」と呼び、これまでの物理学(古典力学)と切り離しました

しかし、物理学者も私たちも(数学者を除き)、何が起きているのかイメージできない問題を考えることは非常に不得意で、あまり好きではありません。

そこで、物理学者たちは、馴染み深い古典力学の概念を使って、なんとか量子力学の現象を可視化しようと試みました

これが私たちのよく知る、量子力学の図説になったのです。

つまり私たちが知っている量子力学に関する説明はすべて、本来はまったく異なる概念である、古典力学によって無理やり描き出したイメージなのです。