DOGEにリストラされた公務員もいきなり無職まで堕ちるわけではなく、彼らは少し低い年収ゾーンの椅子に回り、元々それらの椅子に座っていた人達は一段下の椅子へ、と影響はあくまでも玉突き状に起きるため、失業保険が跳ねるのは最後である。失業保険継続申請件数の方は失業者数と同じ増え方をしている。

最先行指数であるチャレンジャー人員削減数はDOGEの波が来た後に2023~2024年並みのペースを維持する。これは2022年と違って引締めが効いて雇用が減速している状態を再確認するものであるが、確かに「失業」という観点で見る限り、全く悲壮感がない。

NFPの信用

NFPの大規模な修正はトランプを激怒させた。一人だけ弱いNFPは無視してよいのだろうか。

パンデミック後にNFPが下方修正されやすいことは先ほどウォラーも取り上げた通り常識にもなっているが、ここ2ヶ月の下方修正幅は過去対比でもかなり大規模なものであった。クック理事は「大規模な修正は経済の転換点の典型的な現象」と述べたが具体的にどういう仕組みかは説明しなかった。実際、これまでの最も大規模な下方修正は2020年と2009年にそれぞれ行われている。

一般論として、サーベイに対する回答は大企業の方が早く、従って大企業と中小企業の景況感の乖離が広がる場面では、大企業の回答に基づいて中小企業を推測すると下方修正を強いられる。また企業の新設・廃業の動きはすぐには捕捉できないため、その分の雇用については過去の新設ペースを用いることになる(Birth-Death model)が、例えば企業の新設ペースがモデルよりも下方に変曲していた場合、やはり後で下方修正を強いられる。

このように、そもそも月次で雇用情勢を精密に捉えるのが無理な作業であり、修正幅が大きいからと言ってNFPを「使えないから見ない」と決め付けるのは非合理的である。どうしてもというならADPで代用できるだろう。先月はADPに対する怨嗟の声が溢れていたので嫌味に聞こえるだろうが。