需給予測から計画提出まで。Tensor Energyのソリューション
** 安藤 ** :FIPの課題に対して、Tensor Energyではどのようなソリューションでアプローチしていますか?
** 堀 ** :1つ目が、事業計画作成の支援です。先ほど、FIP転により事業収益の前提が大きく変化してしまうという話をしましたが、そこに対して、FIP制度のもとで太陽光発電所に併設した蓄電池を活用しながら事業を展開していくシナリオ、シミュレーションを作成していきます。これらのシミュレーションは資金調達を検討している発電事業者にご活用いただいており、今後そういった事業に貸し付けを行う金融機関等にご活用いただくことを想定して開発しております。
もう1つは、運用のサポートです。蓄電池を併設することで、充電と放電をプレミアムに合わせてコントロールできるようになります。Tensor Energyでは、発電量や電力価格をAIにより予測し、それに基づいた充放電計画の策定ならびに、発電販売計画の自動生成・提出を行います。発電事業者が自ら実施することが難しいと感じる、バランシング業務の複雑さの解消にアプローチしています。
** 安藤 ** :Tensor Energyの運用ソリューションの大きなメリットは発電所の「クセ」をリアルタイムで反映できる点にあります。 とくに、レジルのように複数の発電所を保有している事業者の場合、発電所の特性を踏まえて発電実績値を基に予測モデルを最適化して予測結果を出してくれるため、バランシング業務に役立てることができます。
** 堀 ** :おっしゃる通りです。発電所の立地や地形、さらには設置されている設備の「クセ」により、同じ天候条件でも発電量は異なります。Tensor Energyでは、そうした発電所ごとの固有の特性をAIに学習させ、過去データに基づいて高精度な発電量予測を行っています。 リアルタイム性という部分に寄与しているのは、予測の更新頻度です。Tensor Energyでは、最短30分おきに新しい気象データを取得して予測をアップデートしています。電気のスポット市場(※3)では、前日の午前10時に入札を行い、正午に発電計画を提出します。計画提出の直前まで予測を更新できるため、より正確な発電計画が立てられるのです。
これは、リアルタイムに近い時間前市場(※4)においてより大きな特長を発揮できるソリューションだと考えていますが、時間前市場の取引量自体はまだまだ少ないのが現状です。今後の制度変更などにより時間前市場の更なる活性化が実現すれば、私たちのソリューションはさらに大きな価値を提供できると確信しています。
** 安藤 ** :2025年5月には、アセットマネジメント機能β版もリリースしていますね。これは、財務の観点から発電所の実績を管理できる機能だと理解しています。
** 堀 ** :そうですね。複数の発電所を保有している事業者が、どの発電所のパフォーマンスがよいのか、逆にパフォーマンスが低くテコ入れが必要な発電所はどこか、などを収益の観点から瞬時に分析できる機能です。リアルタイム性はもちろんですが、これまで発電所ごとに明細をダウンロードして全体データを作成していたところを、全データを自動的に取得して可視化・分析できる仕様で、財務管理の煩雑さからも解放されます。 予測と実績のタイムラグが減ること、月次損益などの確認や分析がやりやすくなることで、資金調達もしやすくなります。

※3 スポット市場:電力取引を使用日の前日に行う市場のこと。前日の午前10時に入札、正午に発電計画の提出を行う。 ※4 時間前市場:当日の需給バランスをもとに調整や売買を行う市場のこと。最短で1時間前まで調整が可能。