過去の自分も含めて自分だと認め、現在の自分と和解し、「本当に大事にしたい価値」に立ち戻っていました。
研究チームは、こうした価値の再確認(価値アファメーション)が道徳的アイデンティティを回復させると述べています。
ある参加者は「最良の親であるために自分を許し前を向こうと思った。娘のうつには様々な要因があり、自分だけが悪いわけではないと理解し直した」と語りました。
④ 感情対処の違い:押し殺そうとすると余計に頭から離れなくなる
自分を許せない人は、辛い感情に直面することを避け、「考えないようにする」「仕事やゲームで気を紛らわせる」といった回避的対処を取っていました。
一時的には楽になりますが、根本的な解決にはならず、罪悪感が残り続けます。
「押し殺そうとすると余計に頭から離れなくなる」と自覚する声や、「罪悪感に耐えられず危険な作業に没頭する」という自己罰的な例もありました。
一方、自分を許せた人は、辛い感情や過去の出来事に正面から向き合い、時間をかけて深く掘り下げる「ワーキング・スルー(working through)」を行っていました。
これは感情を押し殺さず、あえて再体験しながら、責任・価値観・自己像の矛盾を少しずつ統合していくプロセスです。
ある参加者は「何ヶ月も自分と向き合い、納得できたことで解放された」と振り返りました。
また、多くの人が信頼できる他者に打ち明け、対話を通じて客観的な視点を得たことで「自分だけが極悪人ではない」と気づく助けになったと述べています。
自分責めからの回復に必要なこと

以上の結果から、「自分を許せない」心理には過去への強い囚われ、過剰な責任感、理想の自分とのギャップ、そして感情を避けようとする対処癖が複雑に絡み合っていることがわかりました。
一方で「自分を許せた」人たちは、過去を受け入れつつ未来に目を向け、自分の責任は認めながらも限界も理解し、そして自分の大事な価値観に立ち返って行動することで前に進めていました。