それは簡単ではありませんが、研究が示すように、それこそが前進するための有効なプロセスだからです。
同時に、「自分が完全に悪いわけではない」「人は誰しも限界や過ちがある」という自己への優しさや理解も忘れないでください。
この自己への共感と教訓の両方から学ぶ姿勢が、次の一歩への原動力になります。
周囲の人を支援する場合も、この研究はヒントを与えます。
研究チームは、自己嫌悪に苦しむ人を支えるとき、安易に「あなたは悪くない」と否定するのではなく、その人が抱える罪悪感や恥の背景を一緒に探り、現実的かつ適切な責任の捉え方を支援する重要性を示唆しています。
それによって本人は自分の中のモラルの傷(moral injury)を癒し、再び自分の価値観に沿った生き方(モラルの回復)を取り戻せる可能性が高まります。
言い換えれば、「自分を許す」ことは過ちをなかったことにするのではなく、本当に大切なものを見失わずに生きるためのプロセスなのです。
「自分を許すのが難しい理由」は、人間の心の複雑さを映す鏡でもあります。
しかし今回の研究は、その複雑さの中にも共通する心理的パターンや道筋があることを示しました。
たとえ心のブレーキを長く踏み続けてきたとしても、責任を認め、限界を理解し、価値観というハンドルを取り戻せば、少しずつでも前へ進めます。
自分を許すことは容易ではありませんが、過去から目を逸らさず向き合い、そこから学んだ教訓を胸に、自分の大切なものに向かって舵を切り直すことで、長い停滞から抜け出せるかもしれません。
今回の研究は、その希望のシナリオを裏付けています。
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元論文
What makes self-forgiveness so difficult (for some)? Understanding the lived experience of those stuck in self-condemnation
https://doi.org/10.1080/15298868.2025.2513878