自分を許せない人の語りには、「本当は自分が悪いのでは」という自己非難と、「いや、自分だけのせいじゃない」という自己弁護の間を行き来する揺れが見られました。

これにより罪悪感が整理されず、長く残ってしまいます。

また「もっと〇〇できたはず」という強い後悔や、「結果を防げると知っていれば別の行動をとれた」という後知恵バイアス(出来事の後でなら結果が予測できたと思い込む傾向)に苦しむ人も多くいました。

特に親や保護者、先輩など守る立場にあった場合、「自分がもっと注意深ければ防げた」という過剰な責任感を抱き、深い自己嫌悪に陥ることが多かったのです。

一方、自分を許せた人は「責任は果たすが、当時の自分の限界も認める」という両立思考(矛盾する二つの考えを同時に受け入れる姿勢)ができていました。

「完璧にはできなかったが精一杯やった」「物事は思い通りにならないこともあると悟った」と語る人も多く、この受容が自己許しへの大きな一歩になっていました。

③ 理想と現実の自分とのギャップ:2度と〇〇する資格はない

自分を許せない人は、自分の行為が「本来あるべき自分」や「理想の自分」から大きく外れてしまったと感じていました。

道徳的アイデンティティ(=“良い人間”でありたいという自己像)が揺らぎ、「こんなことをする自分は善い人間ではないのでは」という深い恥や自己否定に陥ります。

中には「2度と〇〇する資格はない」と自ら罰することで、同じ過ちを防ごうとする人もいました。

例えば「ペットを死なせてしまった自分は、もう新しいペットを飼う資格がない。許せばまた同じことを繰り返すかもしれない」と考えるケースです。

長年やめられない悪習慣に悩み、「意志が弱くダメな人間だ」と自己嫌悪に陥る事例もありました。

一方、自分を許せた人は「過ちは犯すけれど、自分は大切な価値観を持っている」と不完全な自分を受け入れていました。