第一の位相は、外国勢力の選挙干渉だ。これは最も問題の度合いが深刻だと考えられている。本来は選挙とはその国の国民がその国の代表者を決めるプロセスなので、外国勢力が干渉してはいけない、という「治者と被治者の同一性」の民主主義の原理に関わる事項が守られなければならない、と考えられる。
ただし現在、これについて、日本でロシアの選挙干渉があったことを根拠を持って示してる者はいない。しかし、ひとたび認定されれば最も深刻度の高い問題に発展することがわかっているので、印象操作によって利益を得る勢力が、必死に印象操作を進めようとしている状況だ。
深刻度が高いがゆえに、疑惑のある領域に調査をすることは認められるべきだろう。しかし印象操作を通じて、言論・思想の自由が恣意的に規制されることは、違憲の恐れすらある別の深刻な事態だ。慎重に見守らなければならないことは、言うまでもない。
第二の位相は、ロシアに対する立ち位置だ。ロシアの国際法違反に抗議したり、日本政府がその違反行為に厳しい対応をとったりすることを主張する立場は、当然認められるべきだ。それができなければ、外交政策を議論することができなくなる。他方、現在の日本政府であっても、歴史上類例のない包括的な対ロシア制裁体制に参加しているとはいえ、ロシアとの接触を全面的に断っているわけではない。
ロシア政府と関係を持っている組織は全て日本から追い出し、スプートニクの活動も禁止すべきだという意見もありうると思われるが、それは別途そのような意見として提示するのでなければ、混乱が広がる。証明されていない第一の位相の疑惑を演出して、第二の位相であるロシア政府関連組織を日本国内から追い出そうとする流れは、議論の在り方としては錯綜している。
第三の位相は、ロシア政府が表明している思想に共鳴している日本人についても、取り締まりの対象にするべきかどうかという論点である。これについては思想共鳴の度合いに応じて、深刻度も変わるだろう。