逆に信者ビジネスを目論むニセモノは、「いま、この瞬間」ばかりを押し売りしてくる。本人の専門に注目が集まる機会に便乗して、真偽に関係なく「みんなが言ってほしそうなこと」をペラペラ喋り、視聴者を自分に依存させるよう露出し続ける。要は、学問をクスリにする売人である。

しかしそれは瞬間の快楽だから、飲んでハイになっても、いつか効き目が切れる。「釣られたのかな?」と不安も募る。しかし売人と組んで言論を売る反社みたいな業界人は、「もう ”ホットイシューじゃない” ネタは検証しないんですね~」と嘯き、次のおクスリを売り込み始める。

危機の時代は、そんなビジネスにはうってつけだ。国民全員が特定の話題に関心を持ち、何を言ってほしいかもだいたい見当がつくからだ。

平時なら自己啓発の業者が営む事業に、政府や学者が乗り出して、公金どころか公的な関心をチューチューし、信者化してポケットマネーを吸い上げた。それが2020年代の実情で、前世紀の最も危険な頃にも似ている。

だからそんな時代に必要な「ワクチン」は、歴史であり古典である。同調圧力とともに迫ってくる瞬間から身を剥がして、違った時間軸で現在を相対化するテキストを持っていれば、簡単には誰かの信者にならない。