誰が生き誰が死ぬかは神が決めることであり、敵軍に友人や親戚がいたとしても、結果を気にせず務めを果たすべきだ、とアルジュナ王子に伝えるためでした。
アルジュナ王子の心労を少しでも減らすための、クリシュナによるショック療法と言えるでしょう。
この言葉をオッペンハイマーは自分流に解釈して「私は死神、世界の破壊者」としたのです。
こうした背景を知ると、この言葉の真意がみえてきます。
オッペンハイマーは原爆が戦争に使われた場合、何が起こるかを誰よりも知っていました。
もしオッペンハイマーの立場に優しいアルジュナ王子がいたら、やはり原爆作成に疑問を感じたでしょう。
しかしオッペンハイマーはマンハッタン計画のリーダーとしての義務を果たさなければなりませんでした。
ただオッペンハイマーは神の化身でも王族でもなく、後に核兵器開発を主導したことを後悔したと吐露しています。
「私は死神、世界の破壊者」
オッペンハイマーが残したこの言葉は、義務と結果を割り切れない人間の悔恨の呟きだったのです。
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参考文献
Born−Oppenheimer 近似と断熱近似(PDF)
https://core.ac.uk/download/pdf/197295286.pdf
元論文
The maximum mass of a neutron star.
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1996A%26A...305..871B/abstract
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部