しかし核融合の燃料が尽きてしまうと星を支える力が失われ、全てが星の中心点に向かって落下をはじめます。

すると星の内部は異常な高温高圧にさらされ、原子も原子核もバラバラに砕けてしまい、星の中心部には原子核の部品の1つである中性子のみが残されます。

2つの野球ボールを頑張ってくっつけようとしても、空間的な位置が重なってくれないのと同じように、中性子に圧力を加えても「普通は」反発されて重なりません。

そのため中性子の核ができると、かなりの圧に対しても、星を支えられるようになります。

たとえば超新星爆発も、中性子の核の耐久性に依存しています。

核融合の燃料が尽きると星の外部が中心部の核に向けて一斉に落下していきますが、硬い中性子の核にバウンドすると、逆に外側に向けて衝撃波として跳ね返りを起こします。

この外向きの跳ね返りこそが、超新星爆発の正体です。

太陽に同サイズの巨大水風船をぶつけたら火が消えるのか?

では中性子の硬い核さえあれば、どんなに巨大な星も支え切れるのでしょうか?

この疑問に対しオッペンハイマーは、中性子が耐えられる圧力は無限ではなく、一定の限界があることに気付きました。

そして限界を超えた圧力が加わると「重力崩壊」という現象が起こって、全ての物質が無限に1点に向けて落下しはじめます。

オッペンハイマーはブラックホールの存在に気付いていました
オッペンハイマーはブラックホールの存在に気付いていました / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

この全てが1点に落下する存在こそ、現在私たちがブラックホールと認識している天体になります。

つまりオッペンハイマーはブラックホールの存在に最初に気付いた1人だったのです。

しかし論文が発表された1939年の段階では、ブラックホールの存在自体に多くの人が懐疑的でした。

そのためオッペンハイマーの理論は、1960年代に再びブラックホールの問題が議論されるようになるまで、忘れられたままでした。