さらに、VARの導入には高額なコストがかかる。一説によれば、VARシステムの維持費は年間約1億円といわれており、J1の試合では対応可能でも、J2やJ3の試合においては大きな財政的負担となる。

また、J2・J3のスタジアムにはVARに必要なカメラや通信インフラが不足していることが多く、特にJ3では複数のカメラ設置や高速ネットワーク環境の整備が遅れている。これらの技術的インフラの不足が導入の大きな障壁となっている。よって、前述の栃木SC対SC相模原戦のようなVAR運用上の問題も起こり得るのだ。

JFA審判 写真:Getty Images

解決策と今後の展望は?

審判の育成と報酬改善

審判の質を向上させるためには、JFAによる審判育成プログラムの拡充と報酬の改善が必要だ。Jリーグの審判報酬は、欧州のトップリーグに比べて低く、モチベーション低下の原因となっている。待遇を改善し、プロフェッショナルレフェリー(PR)の数も増やし、VAR専任のトレーニングを行うことで、J2・J3でもVAR運用が実現可能になるかもしれない。

プレミアリーグの主審の平均年俸は17万ポンド~18万ポンド(約3,300万円~約3,500万円)、トップレフェリーともなれば25万ポンド(約4,900万円)程度と報じられている。

一方、現在のJリーグの審判報酬は、J1リーグの主審が1試合あたり15万円、副審が8万円、第4審が3万円、VARが6万円、AVARが3万円。J2の主審が7万円、副審が4万円、第4審が1万7,000円。J3の主審が5万円、副審が3万円、第4審が1万5,000円となっている。これらの報酬には交通費や宿泊費が別途支給されるが、特にJ2以下では報酬の低さが課題となっている。

PRの年俸については、2025年からJFA審判マネジャーに就任した元PRの西村雄一氏が、スカパー!の『Jリーグラボ』にゲスト出演した際、MCの野々村芳和Jリーグチェアマンから話を振られ「一般企業の管理職くらい」と語り、野々村氏は「1,000万円ちょっと」と付け加えた。