つまり、所得が高い層(中高年以上に多い)は、リベラルで外国人との共生を考えていて財政を気遣っており、所得が低い層(ロスジェネや若い層に多い)は、外国人排除に共感して財政など何とでもなるのだから消費税を無くしてお金を配りまくることを望む、という分断・対立である。そして、この分断はこれから益々激しくなり、日本社会もアメリカのような分断に向かって進んでいくという見立てが多い印象がある。

これらの説明は分かりやすいし、真実であることは間違いない。しかし、私は実は今後より深刻になるのは、実は都市 vs.地方という分断であり、政治や社会を意識する中で、そのことを強く心配する必要があると考えている。

今回の選挙で顕在化し、国民民主党や参政党に大きく流れた「これまでの無党派浮動票」の影響が強まれば強まるほど、消費減税への圧力や、年収の壁を上げることへの圧力が強まることは間違いない。

石破政権が続くにせよ代わるにせよ、消費減税の議論・年収の壁の議論は顕在化するであろう。そして、こうした動きが加速すればするほど困るのは、実は地方財政である。例えば2023年度の税収実績を基にした場合、消費税が廃止されると、都道府県の減収額は8兆5000億円と見込まれている(総務省試算)。

年収の壁(103万円の壁)の75万円の引き上げによる地方財政への影響について、かつて全国市長会は、地方の歳入は4兆円程度の減収を見込んでいた。国費による補填ゼロということにはならないと思うが、国全体として「ない袖は振れぬ」状況にあるのもまた事実で、今後、無党派浮動票層の声が大きくなればなるほど、実は、地方自治体が困るのは目に見えている。

つまり、裏返して言えば、これまでの自公政権は、こうした都市の無党派浮動票層の圧力をかわしつつ、地方やそれを支える組織(建設業とか農業などの地域を支える各種業界団体)に行きわたるように自治体を介して交付税等を流してきたわけである。都市の無党派的浮動票層の大きなうねりの前に、つまりは不満の爆発によって、ついにダムが決壊しつつあるというわけだ。