実験では、まず汗の嫌な臭いだけを再現した「汗臭い匂い(ベース匂い)」を作りました。

次に、排卵期に増える3つの成分だけを混ぜた「排卵期の匂い」を準備しました。

そして、この2つを合わせて「汗臭さ+排卵期の匂い」というサンプルも用意しました。

男性にはこれらを嗅いでもらい、それぞれがどのように感じられるか評価してもらいました。

すると、排卵期の3つの成分を混ぜた匂いは、男性にとってとても良い印象を与え「化粧品や香水のような匂い」「柑橘系(シトラス)のような爽やかな香り」「気分が落ち着く香り」と評価されました。

一方、単に汗臭いだけの匂いは「汗臭い」「脂っぽい」「生乾き臭」「生臭い」など、不快に感じられてしまいました。

しかし、汗臭さに3つの成分を少し混ぜるだけで嫌な臭いが薄まり、全体として良い香りに変化しました。

また、汗臭さが減ったことで「女性らしい匂い」という評価も高まりました。

さらに、この3つの成分をバラバラに1つだけ混ぜても多少の効果はありましたが、3つ同時に混ぜた場合が最も強い効果を示しました。

比較のために別の時期(卵胞期)に増える他の物質を混ぜて試してみましたが、それらでは排卵期の3つの成分ほど良い効果は出ませんでした。

つまり、この3つの成分こそが排卵期の匂いの「いい香り」の正体である可能性が高いことがわかったのです。

ですが最も興味深かったのはその効果です。

排卵期に増加する成分の官能評価と女性の顔に対する印象評定
排卵期に増加する成分の官能評価と女性の顔に対する印象評定 / Credit:女性の排卵期に増加して、男性にポジティブな生理・心理効果を与える体臭成分を特定

研究チームは、この排卵期の香りが男性の心や体にどのように影響するのかを調べました。

具体的には、男性たちに匂いを嗅ぎながら女性の顔写真を見てもらい、その印象を評価してもらいました。

同時に、男性の唾液に含まれるα-アミラーゼという物質も測りました。このα-アミラーゼは、人がストレスを感じると唾液に増えるため、ストレスの指標になります。