当時でも60歳までは男女ともに色々な仕事をして、たくさんの経験を積んできた人々なのだから、「非生産的」というラベルは逆に非現実的であるというのが、多くの「高齢者の生活」を見てきた私にはこの講義の出発点であった。
「高齢者の自立」を軸とした
なぜなら、「高齢者の自立」をテーマとして1990年代と2000年代に調査票を使った計量的研究を進めて、いくつかの比較研究によって図3を得ていたからである。この連載では『社会調査から見た少子高齢社会』(6月29日)、及び『格差不安時代のコミュニティ社会学』(7月13日)で細かく説明した。

図3 高齢者の自立志向 (出典)金子、2011:162.
この「自立」は身体的、金銭的、人間関係的な3側面から構成されていて、それら3者が連携することで、図1で分類した「高齢者」のいずれにも「自立」が可能であるとのメッセージを含んでいた。
多くは家族、仲間、働くことなどの人間関係面の要因であるが、その前提に身体的自立と金銭的自立が位置づけられている。また趣味活動はもちろんだが、調査票からのデータを細かく精査したところ、別枠で「得意」が検出できた。これは思いがけない発見であった。
趣味活動は音楽、美術、保健体育、技術家庭のいずれかに該当する
「得意」とはそれまでの趣味活動として一括されてきた「自立」要因である。趣味活動ならば、中学校で学習を放棄してきた音楽、美術、保健体育、技術家庭という4科目のどれかに含まれるという調査結果を得ていた。だから長年にわたり、高齢化対策としても主要5科目だけでなく、この中学校の4科目を充実せよと主張してきたが、文科省にも厚労省にも黙殺されてきた。
中学の4科目が高齢者の生きがいを支える中学の4科目が50年後の高齢者の生きがいを豊かにしてくれるのであるから、厚生労働省系列の高齢化対策としても意味があることを文科省は認めなかったのである。