こうして完成したSyn57は、「コドンを大幅に削減しても生物が生存可能である」ことを初めて明確に証明した、画期的な成果となりました。

研究者たちは、この成果によって「理論上ほぼ全てのウイルスに対して強い耐性を示す」細菌を作り出せる道が開かれたとしています。

ただし、実際に全てのウイルスへの耐性が証明されたわけではなく、今後のさらなる検証が必要です。

また、この研究は単にウイルス耐性だけにとどまらず、新たな人工タンパク質やバイオポリマーの生産といった、未来の技術開発のための基盤となる可能性も秘めています。

つまり、この研究が示した技術を土台として、これまでの自然界にはない、新しい可能性を秘めた生物を設計する時代が現実に近づいたのです。

【まとめ】人工的に設計された生命「Syn57」は世界をどう変えるか?

【まとめ】人工的に設計された生命「Syn57」は世界をどう変えるか?
【まとめ】人工的に設計された生命「Syn57」は世界をどう変えるか? / Credit:Canva

今回の研究によって、「生命が使う遺伝暗号(コドン)は私たちが考えていた以上に自由に書き換え可能であること」が初めて明確に示されました。

これまで、生命の遺伝暗号は64種類のコドンがあり、それらが20種類のアミノ酸を指定することでタンパク質が作られていることが知られていました。

そして、もしこの遺伝暗号から一つでもコドンを取り除けば、生命活動に致命的な影響を与えると長い間考えられてきました。

なぜなら、遺伝暗号は地球上で数十億年もの進化の中で培われてきたものであり、それほど重要なコードを大きく変更することは生命にとって不可能に近い挑戦だと思われていたからです。

ところが、今回の実験で科学者たちは、なんと7種類ものコドン(これは全体の約1割に相当します)を一気に削除した遺伝暗号を持つ人工大腸菌「Syn57」を作り出すことに成功しました。

この人工細菌は遺伝情報を大きく変更したにもかかわらず、実際に生命活動を続け、細胞分裂によって子孫を残すこともできました。