さらに人工的な遺伝暗号を使う生物は、自然界の生物と遺伝情報を交換することが極めて難しくなります。

つまり、万が一人工生物が環境中に漏れ出しても、周囲の生態系に遺伝子が広がる危険性(遺伝子汚染)を防ぐことが可能になるのです。

このように、人工的に再設計された遺伝暗号は、医薬品開発やバイオ素材製造といった産業利用だけでなく、環境安全性という点でも非常に大きなメリットがあります。

しかし、そのような応用を実現する前に、そもそも生命がどの程度までコドンを減らすことに耐えられるのかを確かめることが重要です。

本研究の最大の目的は、これまでの3種類よりもさらに多くのコドンを削減しても、本当に生命活動が維持できるのかを探ることだったのです。

 

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元論文

Escherichia coli with a 57-codon genetic code
https://doi.org/10.1126/science.ady4368

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部